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錯体化学会 会長 あいさつ

錯体化学会会長田中健太郎

 この度、錯体化学会第13代会長を拝命しました名古屋大学の田中健太郎です。会長就任にあたり、会員の皆様、錯体化学に関心をお持ちの皆様、錯体化学を学び社会へ巣立ったOB·OGの皆様にご挨拶を申し上げます。2024年9月から2年間の任期中、錯体化学会を支えてこられた歴代の会長、理事、運営委員、各種委員会委員、会員の皆様の錯体化学に向けた情熱を継承し、知識を共有する場、知見を議論する場、若手研究者を育成する場、繋がりを作る場、国内外へ情報を発信する場としての学会の役割を深化・発展させ、錯体化学会が学術創成のためのより能動的なプラットフォームとなるよう挑戦していく所存です。

 錯体化学会の歴史は古く、3つの元号に渡ります。1942年(昭和17年)に最初の錯塩化学討論会が開催され、それにより発足した錯塩化学研究会、錯体化学研究会を経て、2002年(平成14年)より錯体化学会として活動を行ってきました。2024年(令和6年)8月31日現在、正会員695名、名誉会員61名、法人会員8社、学生会員330名で、総会員数は1,086名と8法人であり、国際的にも最大の錯体化学者のコミュニティです。近年、錯体化学会は国際性、多様性、若手支援、発信力について積極的な取り組みを行っています。
 毎年、錯体化学会討論会を開催し、1000名あまりの参加者が最新知見についてのディスカッションを行っています。この討論会では、博士課程の学生やポスドク、教員による口頭発表は英語で行う事を推奨しており、第74回討論会(2024)では68%の口頭発表が英語で発表されました。外国籍研究者の参加も増加し、参加者中9%に達したことも討論会の英語化を推進してきた結果と考えています。国際的な多様性に加え、積極的に理事に女性研究者を登用する制度を設けるなど、男女がともに活躍できる学会作りを目指しています。元気な女性研究者が若手会員や学生会員のロールモデルとなることを期待しています。錯体化学若手の会は、2005年に錯体化学会と融合し、若手会員や学生会員の交流の場となっています。若手の会では、若い世代が独自に運営を行い、夏の学校や支部勉強会、討論会におけるシンポジウム開催など活発な活動を通じて切磋琢磨するとともに将来に繫がる人間関係を構築しています。錯体化学会では、次世代をバックアップするとともに、新しい発想力を若い世代から吸収していきたいと思います。学会誌としてBulletin of Japan Society of Coordination Chemistry (BJSCC)誌を年に2回発行し、研究発表、情報共有の場となってきましたが、加えて今年から論文誌としてCoordination Chemistry Research (COCR) 誌が発刊されました。錯体化学会のオフィシャル論文誌として、錯体化学分野の中心的な国際誌となることを目指しています。会員の皆様も積極的に論文投稿することをお願いします。
 日本の基盤的な学術の低下が叫ばれ、少子化に伴う研究の縮小化も危ぶまれていますが、錯体化学の個々の研究者が、関連学術領域と連携をしながら、自由闊達に研究を押し進め、新しい概念を創出し、基礎から社会課題解決まで幅広い役割を担うことで、これらの問題を解決していくべきであると考えます。錯体化学会が、そのための良いプラットフォームとなるようにできる限りの努力を行ってまいります。会員の皆様には、ご協力のほど、よろしくお願い申し上げます。

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